|
2007年 07月 24日
第3種や4種の指導者で、本当に勘弁してほしいなと思うのは、まだ年端もいかない選手についていちいちネガティブな評価をし、それがその子の実力と断定するようなことを言う人です。そういう人は選手を育てるより、“自分のチーム”が勝つことに関心があるのではないかと疑うのは見くびりすぎですかね。
昨日も小六のひとりについて、「あいつはトラップはうまいけど、そのあとがなぁ」と愚痴るコーチに、「それを言うなら “あいつはキックはまだまだだけど、トラップはすばらしい”でしょう」と意見したら、露骨に“こうるさいやつだ”というような顔をされました。でも、どっちでもいいことなら、わざわざ言わないです。 そのへんをよくわかってない学生の見習いくんが、「ああ、ありますよねぇ。すげえトラップで一瞬“おおっ!”とか思ったら、次のキックがひどくてがっかりすること」なんてお調子こくので、「子どもたちはコーチのためにサッカーやってるんじゃないからね。自分を喜ばすために結果を急いでたら少年の指導はできないよ」と釘を刺しておきました。 課題を重視するあまり、良いところを軽視してはいけない。ましてや、指導者のがっかりした気分なんて取るに足りないこと。どうしたら教え子の一人ひとりがもっと成長できるかを考え続ける限り、がっかりしてるヒマなんかないです。この学生コーチくんは教職の免許を取るつもりらしいですから、スポーツの指導ばかりではなく、教師としても心得ておいてほしいです。 ついでに言うと、上手にトラップできるのに、次のパスやシュートが乱れる子を見ていると、キックそのものに自信がなくて、ミスしたらイヤだなという悪いイメージを持ってプレーしているということもありますし、そもそも練習で身に付けたトラップを、いま何のためにやっているかという、つまり実用に達していないという印象を持ちます。 初心者のうちは、上手なボールコントロール自体が目的で、それを徹底的に練習させるだけでいいと思います。マッチアップはあくまでも遊びです。そしてある程度うまくボールを扱えるような5〜6年生の子には、同じボールコントロールの練習でも、具体的な場面を想定したものをやらせます。DF役と組ませるとか、2対2で攻守を競う形にするなどして。 たとえばボールが飛んでくる方向に対して右からカットに入ってくる相手がいる場合、体のどこを使って、どこにボールを落とせば取られないか、自分で考えさせて実行させたり、足を伸ばしてくる相手の立ち足のほうに落とすと簡単に抜けるよなどとアドバイスしたり、やってみせたり。当然、どのあたりにボールを止めたらいいシュートが打てるか、パスが出せるかを確認させることも大事です。 「ねらいを持ったトラップ」は、うまくいくとすごい達成感があるし、イマジネーションの発達した子どもはどんどん自分で場面を設定した練習をするようになります。もちろんすぐにできる子と、なかなか成果が現れない子はいますが、できないのを最初から最後まで子どもの才能のせいにするなら指導者はいらないです。何が上達を妨げる壁になっているか、それを克服するためには、一人ひとりについて違ったヒントが必要な場合もあります。 言うまでもなく、自分の思いどおりにボールをコントロールできるって、基本だけど偉大なことなんですよ。日本人ではカズなんかピカイチですね。私は彼のボールに触らないフェイントより、トラップのうまさに常々感心しています。もう少し若い選手ではジュビロの前田とか、ジェフの山岸とか。残念ながらJの選手は平均してこの部分が劣っていて、“トラップがうまくても…”と思うことより、“トラップさえうまかったら…”ということのほうが多いです。 少年のときは、日本の子どもは世界一じゃないかと思うぐらい上手な子が多いんですけどね。プロになってヘタになるわけじゃないでしょうが、どうもおろそかにしているように見えます。それは、前述したような「結果ばかりを急ぐコーチたち」とか、それをよしとする学校単位とか年齢別のクラブ編成が原因の一部分になっていると言えなくもないです。 「トラップなんかできたってシュートが決まらなきゃ、パスが通らなきゃ何にもならない」というのは本当でも、「シュートが決まりさえすればトラップのうまいヘタなんかどうでもいい」ということにはならないです。でもコーチがそう思っていたりしますからね。試合になれば、想定外の場面であっけなく点が入ることは否定しませんが、偶然ばかりに頼っていたらうまくも強くもなれません。ねらいどおりにやることを前提に練習に励めばこそ、自分たちの力で勝利に近づくこともできるし、成長することもできるんです。 アジアカップ準々決勝、高原の同点ゴール。ああいう本物の技術を試合で出せるのはすばらしいです。そういうプレー、そういう選手が、いつの日か日本代表の当たり前のレベルになってほしいです。試合中にできることやすべきこと、何ひとつおろそかにせず全神経を注いで取り組む本当のプロ選手が。その日をめざして、まず末端の指導者が手抜きしたらイカンです。
by spielfeld
| 2007-07-24 00:30
|
ファン申請 |
||